相続税、贈与税、Estate Tax

相続の仕事をしている関係上、よく尋ねられるのが税金の質問です。皆さん気になりますよね。私は税の専門家ではありませんが、わかる範囲内でお伝えしておきたいと思います。

 

アメリカ国内の相続税に関して言えば、2018年の連邦税(Federal Estate Tax)は11,200,000ドル(およそ12億4320万円)までは控除されます。毎年変更され2010年は金額の枠がありませんでした。それ以降5,000,000ドルから推移し、2017年は5,490,000ドルでした。2018年はいっきに倍まで控除の額が増えました。来年はどれくらいになるのか、もうすぐ発表されるでしょう。

あとは州によって税金が違いますが、カリフォルニアのように相続税のない州が38州あります。アメリカの場合は被相続人が相続税(Estate Tax)を支払いますので、日本とはシステムが違います。

ところが、日本に住んでいる相続人がアメリカから遺産を受け取る場合は、日本で相続税を支払う義務が生じます。しかも被相続人が亡くなった翌日から10ケ月以内に申告しなければ延滞金が発生します。アメリカの相続がプロベートになった場合、最低でも10か月かかりますので、申告期限内に間に合わせることはほぼ不可能です。およその金額で申告し後日調節するか、もしくは延滞金を納めるかの2通りしかありません。

アメリカに住む日本人が気になるのは、日本にある財産を相続する場合の税金についてです。平成29年3月に改正された現在の法律では、日本国内に住所のある被相続人からの日本国内にある遺産は受け取る側の相続人が日本国籍がなくても相続税の支払い義務が生じます。ただし、日本国以外の資産については、相続人が日本国籍があっても10年以上日本に住所がなく、被相続人もさらに10年以上日本に住所がない場合は、日本国内の財産にのみ課税され、国外の資産についてはその地での法律に委ねられます。いずれも10年以内に住所がある場合は課税されます。また、相続人が日本国籍を有していない場合でも被相続人が10年以内に住所がある場合は、日本国内と国外両方の資産に課税されることになりました。わかりにくいので、例を使ってみましょう。

アメリカ在住の愛子さんのお父さん(一郎)が亡くなりました。相続人は愛子さんと愛子さんの息子のトーマスです。一郎さんは12年前日本で奥さんを亡くしてから愛子さんが住むアメリカに移住しました。一郎さんは日本とアメリカに資産を残したまま亡くなりました。愛子さんは20年以上前からアメリカに住んでいますが、5年前までの3年間、日本で仕事をする機会があり、愛子さんのみ日本に住民票を置いて頻繁に行き来していました。トーマス君はアメリカで生まれ、日本国籍を持っていませんでした。一郎さんが亡くなり、アメリカではリビングトラストを作っていましたので、遺産相続はスムーズに行われました。相続税も遺産は連邦税の範囲内でしたので、税金は支払わなくていいと考えていました。ところが相続人の愛子さんとトーマス君は日本で相続税の支払いがあることが判明しました。

愛子さんは過去10年以内に日本国内に住所がありましたので、一郎さんの日本とアメリカにある財産の両方に課税され、トーマス君はアメリカに住所を持っていなかったにもかかわらず、一郎さんが残した日本国内の資産を相続した分には税金の支払い義務がありました。もし一郎さんが10年以内に日本に住所がある場合はトーマス君は一郎さんから受け取る遺産のアメリカにある資産にも課税されていたことになります。ただし、一郎さんが15年以上日本に住所がない場合、日本で納める相続はこれにはあてはまりません。

以上は架空の相続税のサンプルですが、日本人の贈与税に関しても同じスキームになるようです。ちなみに2018年の贈与税は受け取る側一人当たり15,000ドルまでの控除となります。

多額の税金を納めるのは気が重たいですね。「自分が死んだ後のことは知らないよ」とおっしゃる方も居られますが、せっかく生きている間に作った資産ですから、相続される方たちが途方にくれないように、生きている間にどうするのがいちばんいいのか、専門家にご相談して最善の方法を見つけてはいかがでしょうか?

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