2017年、印象に残ったケース

年が明けて比較的すぐに、弁護士が懇意にしている人から1本の電話がありました。日本人の女性がサンディエゴ郊外の老人ホームで亡くなりました。アメリカ国内には身寄りがないのだけれど、彼女はある程度まとまった預貯金があり、その受取人が日本に住んでいるらしい。手続きをそちらの事務所でできませんか?ということでした。その後日本のご家族からも連絡があり、弁護士とはリテーナー契約を行ってからスタートすることになりました。

亡くなった女性の所持品はすべてサンディエゴ郡の保険福祉局が管理していました。弁護士はまず日本の家族の代理人としての書類を作成し、日本の家族からご署名をいただき、保険福祉局へ送りました。これで弁護士が直接保健福祉局へ亡くなった女性についての照会を行うことができるようになりました。

最初の連絡があってから保健福祉局の担当者と話しができるまでおよそ1か月が過ぎていました。それまで日本の家族を含めて誰もその女性が残した金額を知らされていませんでした。保健福祉局の担当者によるとその金額は我々の想像を遥かに超える額でした。場合によってはプロベートになる案件です。ですが、幸いにも彼女の残した銀行口座には受取人(ベネフィシャリー)が指定されていました。

この場合、プロベートになったとしたら、裁判の費用、弁護士費用、すべてが終わるまでになんだかんだと総額10%ほどの金額が差し引かれます。遺産の分配は配偶者はすでに亡く、子供もいませんので、彼女の兄妹が対象となり、兄妹が他界している場合は、その子供が対象となります。手続きに1年から1年半はかかります。

プロベートにならず、受取人が決まっていた預貯金でしたので、受け渡しは簡単と思われていました。

日本からアメリカまで飛行機に乗ってご遺産を引き取りに来られることは可能ですが妹さんは高齢とともに持病があるためそれが困難でした。

アメリカの銀行口座に入っている預貯金を日本の銀行口座に振り込むことはできないか?誰もが考えることですが、実に難しいものでした。

困難を極めた点は、受取人の妹さん、高齢で持病がありましたが、一人暮らしでした。耳も遠く、電話も留守番機能のない昔ながらの黒電話。もちろんインターネットも、コンピューターもありません。離れて暮らす息子さんが時々お母さんのもとを訪れて少しずつ対応する、ということが続きました。

この手続き、最初のご連絡から日本の妹さんの口座に転送されるまで約10か月が過ぎていました。

弁護士と我々スタッフはこのような難解なケースでもひとつずつ丁寧に解決に導いて行きました。

亡くなった女性は一人暮らしで、いつかは生まれ育った日本に戻りたがっていたとのことでした。その願いは死後ご位牌となり、今は日本の妹さんのもとにあるようです。

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