「デジタル・アセットの相続」を日本語で検索すると、それはデジタル上の資産として考えられる金融資産としての仮想通貨等の相続を意味する言葉として使用されていることが多いようですが、アメリカではその範囲を広く定めていて、簡単にいえば、パソコンやスマホなどの電子機器で管理されているものすべてを含み、それらをすべて個人のデジタル・アセット(資産)の相続として捉えています。
アメリカではすでにデジタル・アセットの相続(死後の管理)に関する法律が46の州(2018年7月時点)で定められています。法律が制定されるまでは、死後、または身体に不自由があってパソコンやスマホにアクセスてきなくなってしまった場合、家族であろうと勝手にその人のオンライン上のアカウントにアクセスすることは許されることではありませんでした。会社によってはある一定期間、アカウントにログインされていないと自動的にクローズされてしまいます。
法律により、遺言書や、パワーオブアトーニー、トラストなどで指定されたExecutor、Agent、Attorney-in-Factと呼ばれる代理人、遺言書執行人(または会社)の手によってアカウントをそのまま保持したり、消去したりということができるようになり、パスワードやユーザー名などが不明の場合は、請求できる権利を持つことができました。
ここでは法律の名前や詳細については省きますが、法的基準は2014年州ごとに決められ、その内容は改訂版も発行されています。デジタル・アセットは日々進化してますので、これからも新たな基準が追加されていくのは間違いないでしょう。
興味のある方は、全米州議院協議会のホームページにアクセスしてみてください。
ただし、エステートプランニングをする際、トラストや遺言書、パワーオブアトーニーの中でデジタル・アセットの項目について含めておかないと、その効力は発揮できません。
先日翻訳したミシガン州のパワーオブアトーニーには以下のような文章が記述されていました。
デジタル・アセットを管理する権限
エージェント(パワーオブアトーニーによって指名された人物)は、私のデジタル・アセット(受送信しているイーメール、イーメールのアカウント、デジタル・ミュージック、デジタル写真、デジタル・ビデオ、ゲーム・アカウント、ソフトウェアのライセンス、SNSアカウント、ファイル・シェアリング・アカウント、ファイナンシャル・アカウント、ドメイン登録、ドメインネームシステム(DNS)サービス・アカウント、ブログ、メーリングリスト、ウェブ・ホスティング・アカウント、税金関係のサービス・アカウント、オンライン・ストア、オークション・サイト、オンライン・アカウント、その他(現在存在している、または今後の技術によって開発されるものを含めた)デジタル関係の資産すべてに接続、修正、管理、記録保管、移動、消去することができる。
私のデジタル・アセットとはクラウド、または私のデジタル機器の中にあるものです。エージェントは、私のデジタル・アセットへのアクセス、修正、管理、保管、移動、消去するために、私のデジタル機器へのアクセス、使用、管理することができる―これは、私のデジタル機器に接続する唯一の、私のデジタル・アセットへアクセスするためには欠かせない権利です。デジタル機器とはデスクトップ、ラップトップ、タブレット、周辺機器、ストレージ・ディバイス、携帯電話、スマートフォン、その他現在存在しているまたは今後の技術によって開発される同様のハードウェアを意味する。
今やデジタル・アセットは誰もが持っている時代です。ユーチューブ、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディア、クラウド上にある写真、動画、文章、絵、音楽、なども含まれます。銀行口座、株の取引きなどオンライン・アカウントはプライバシーがほぼほぼ網羅されているものですので、ご自分の遺言書には必ずこれらをどこに誰がどう継承(保管、管理、消去など)していくのか決めておく必要があります。
エステートプランニングで守られるのは、今や金融資産や健康に関することだけじゃなく、オンライン上にあるアカウントも含む時代になったといえるでしょう。